飯の美味い軍隊が弱い訳ではない

戦闘糧食がそこここで取り上げられている。その脇で
自衛隊の飯は美味い、だから(食に拘ったヘタリアのように)弱い」
という極論がたまにWeb界隈では見つかる。
 
そうかもしれない、と思った人は普通の人であると同時に、用意する側と用意される側の内側を忘れている。
軍事というのは条件次第でどうとでもなるので結論を急ぐ事はできないし、何より終戦よりこの方、大規模に参戦したことは無いためもっと難しいので、事はそう短絡的に結論できない事を念頭に入れて欲しい。

イタリアが”ヘタリア”と言われ続けているのは、末端たる兵の側が食に満足を求めすぎたから。
アメリカの最大の強さは、最新兵器その他ではなく、生産力を背景にして食や兵士へのケアを重要視していたから。
旧日本軍の兵士の評価の高さと、上層部の評価の低さは、兵站どころか補給の概念が欠如していたから。

おおまかにWW2と太平洋戦争については、自分はそう解釈している。
(イタリアの弱さは別にもあったり・・・というか沢山あるが、とりあえずはそういうことにしといてください)
 
我が父が昔、太平洋戦争から帰ってきた人に聞いた話。

「そのオッサンが敗戦で投降した後、米軍の収容所で飯を貰ったときな、
 ”こんな美味いもんを食ってる奴らに、勝てるわけが無い”と。
 軍の上のほうは、下の事をまったく考えてないで作戦立てるんだから、そりゃなぁ」

米軍が出した飯を「美味い美味い」と食う日本兵捕虜…反応に悩む内容である。
(旧軍の悪しき部分というか、現地調達を前提に作戦を組む時点で色々終わってたというのは、他にもっと詳しい情報があるので割愛する)
 
話は戻って自衛隊の飯の話。
自衛隊でマシな飯は、ちゃんとした栄養士が頭を捻っている駐屯地の献立と、演習などで支給される戦闘糧食がある。
(PXの有料食堂や喫茶店もあるが、こっちは除外。概ね美味いので)
 
それ以外では…味はともかく、食えればOKのレベルのものが混ざる。手抜きと言っていいような料理とそうでないものが献立にある訳だ。食堂では献立通りに作る他ないので、あとは素材のレベルに左右されるのだけれど量を重視にせざるをえないため、酷いものもあった。
新兵の頃は良い献立も悪い献立も、味を気にする余裕は無いのだが、部隊所属になってようやく「あ、飯マズッ」とわかる。
 
このように、大抵の自衛官は不味い飯とまあまあのものを両方食している。食べないのは自由だが、自分が倒れるのでなるべく腹に収めるよう努力する。そのため”確かに美味い飯は食いたいが、自衛隊で出てくる飯は自分が稼動するためのエネルギーに過ぎない”事を、自覚している人がほとんどだ。(実際、元自の自分自身はエネルギー摂取と割り切ることで、調理はされてもまったく味の無い食材もそのまま食えるくらい)
 
自衛隊が強いか弱いか、については武装面で言うと今の状態では”中距離ランナー”というのが自分の評価だ。
食糧事情面ではどうかを考えると、ほんの少しだけマシなんじゃないかと思うが、まだまだ不十分だ。
単純に最強とか強いとかいう評価はできないが、「弱い」という評価は少なくともつけない感じだろうか?
 
(まあ、守屋のバカみたいな奴が金を浪費するよりも、現場が持てる能力を常に発揮し続けられる部分に力を注いでもらいたいという話なんだが)